女子会を検証してみる
「食べること」となると、これを私たちは片時も忘れることができません。
3度3度の食事や、その間にたしなむお茶や間食、食はまさに人間の根元的な楽しみでしょう。
同時に、食のすべては私たちの健康や成長に直接関わっています。
それだけに、食べものに関しては、いろいろな効能や害が語られます。
それらは、先祖代々に受け継がれてきた言い伝えや、世間で広く流布されるうわさ、さらにはマスコミなどを通じて知らきれる解説など種々雑多で、その内容の真偽については、はっきりしないものがたくさんあります。
このように食に関するさまざまな疑問を、専門家の方々にぶつけてやさしい答えをひき出し、短い物語にまとめてみたのがこの本です。
私たちが日々の暮らしのなかで、なんやかやといつも気にとめているのは、衣食住に関することがらです。
寒い日には風をひかないようにと、暖かい着物を身につけますし、暑いときには汗をよく吸収するような服を探します。
そして、快適に暑さや寒さをしのぐたに、冷暖房のきいた部屋で過ごしたいと願います。
衣と住への気くばりは、生活の根幹たとえば、食べものの好みは遺伝するのだろうか?卵はコレステロールを増やすのか、それとも減らすのか?人工イクラって何でできているの?背の青い魚を食べると頭がよくなるってホント?ごはんを食べると美人になる…、などなど。
「Tの小説『猟人日記』の1節で、フランス料理の名コックが出てきて、その料理があんまりおいしいのでコツを聞くと、いかに材料の味を変えてしまうかだ、と答えているんです」国立歴史民俗博物館のSさんは、日本の食文化の特徴を語るとき、よくこの話を取りあげるという。
素材の新鮮な味を生かすことに美徳を見出す私たち日本人には、なんとももったいない話だ。
素材の味を生かす。
それは、究極的には生で食べることにいきつく。
アラスカのイヌイットが生肉を食べることはよく知られているが、これはまた日本に独特の習慣でもあるらしい。
「3世紀の中国の『魂志倭人伝』に日本人は、夏でも冬でも生野菜を食べるとあるんです。
いまもそうですが、中国人は野菜を生で食べなかったので、特異なこととして記録したのでしょう」同じ頃、肉や魚も生で食べていたことが、「古事記」や「万葉集」、「風土記」に記されているという。
「一昨年前、7〜8世紀の都の跡からトイレが見つかって、そこから寄生虫の卵の化石が出てきたんです。
このことから、野菜や魚を、生か半生の状態で食べていたことがわかりました」もともと日本語の「料理」や「調理」という言葉は「物事を整えて処理する」という意味をもつ。
そこに火の気は存在しない。
それに対し、中国語で料理することを「烹妊」とか「烹調」などというが、「烹」は「にる」という意味、扇」はズバリ、火を表している。
「英語のCOOKも煮炊きするという意味です、中国語も英語も、火を使わないと料理が完成しないわけです」では、なぜ中国やヨ−ロッパでは煮炊きの調理法が発達し、逆に、日本では発達しなかったのだろう。
それは、中国やヨーロッパの食は動物型で、日本のそれは植物型ということにも関連する。
「つまり、ヨーロッパ人などの肉食民族は、羊、ヤギ、牛などの家畜を秋の終わりに備蓄して保存食にしたのですが、新鮮でない肉を食べるには、火を使って調理することが必要だったんです。
香辛料が発達したのもそのためです」それでは、この植物型であるという日本の食体系は、いつ頃から形成されたのだろう。
「はるか縄文時代から受け継がれたものです、人間の骨を調べれば、生きていたときに、どんなものをどのくらい食べていたか割り出せるんですが、縄文人の骨を見ると、彼らの食事が明らかに植物型だったことがわかります」菜食というと、稲作が始まり、野菜も作るようになった弥生時代以降のことを連想しがちだが、縄文時代の主食はクリやトチ、ドングリなどの木の実や、ヤマィモなどの植物。
もちろん狩りによる獲物の肉も食べてはいたが、その量や頻度はかなり少なかったようだ。
「日本人の食の根本が植物型である証拠に、若い頃は肉や脂っこいものが好きだったのに、中年以降になると淡白な味が好きになるでしょう。
これは本州、4国、Kの人の、特徴的な老化現象なんです」では北海道と沖縄は、というと、北海道では縄文時代以来、海産動物への依存が大きかったこと、沖縄では十2〜13世紀に中国から入ってきた養豚が定着していたことで、日本人でも例外的に肉を好むのだという。
「中国、西アジア、ヨーロッパでは、農業が始まった石器時代から家畜を飼っていて、その頃から肉を食べ続けているわけです、だから、血や内臓を食べるのも当たり前のことなんですが、日本では概して内蔵を食べる習慣はありません、こういうのは世界的にも珍しいんです、ユダヤ教徒は血を神聖であるがゆえに食べないんですが、Kや本州の人びとは汚いから食べないんです」これら民族の食生活の違いは、乳幼児の離乳食からも見てとれるという。
「日本の離乳食というと、米と魚が中心ですね、これが中国や韓国、あるいはヨーロッパになると、肉かミルクになるわけです」Sさんがいま、いちばん関心をもっているのは、各民族の食体系は世代ごとに繰り返されて伝承するのか、それともDNAに組み込まれた情報により遺伝するのか、ということである。
「ぼくの場合、牛乳を2杯も飲めば下痢します、多くの日本人はラクトース(乳糖)を分解する酵素が2〜3歳でなくなってしまうからなんです、でもヨーロッパや西アジアの人はずっと飲める、これは食体系がDNAまで影響してしまった例といわれています」このところ、日本古来の食文化が失われつつあるとの声が聞かれるが、考古学の立場からその将来を見通してみると、基本的にはあっさりとした食事が続いていくだろう、とSさんは考えている。
まして、DNAがからんでいるとなれば、なおさらのこと。
結局、日本人の生涯の食生活は、淡白な味に始まり、淡白な味に終わるといえそうだ。
コタッに入ってミカンを食べる。
これなしに、日本の冬は語れない。
ところで、ミカンの産地といえば愛媛県が有名だが、Kもその生産量を誇っている。
なかでもK県は、ミカンをはじめ、メロン、スイカなどの栽培が盛んな、知る人ぞ知る果物の名産地だ。
そのKで、ミカンのおいしさを測定しよう、と思いたった人がいる。
K大学工学部教授のTさんだ。
なんともユニークな発想だが、「ミカンのおいしさ」とは、いったいどのような方法で測定するのだろうか。
「簡単にいえば、ミカンの表面の色を測るんです、正確には、ミカンの皮に含まれているカロチノイドの量を測るわけです」ミカンの黄色は、カロチノイドという色素がもとになっている。
つまり、黄色ければ黄色いほどカロチノイドが多いということだが、「人間が目で見ただけでは、どうしてもいい加減さが出てきます、実際、ミカンがグリーンがかって見えても、意外とカロチノイドが多く含まれている場合もありますから」測定に使うのはラマン分光器という機械である。
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